![]() メルローの穂木 これをSO4台木に接木します 冬場のもう一つの大切な仕事=接木と醸造所横での 青空テイスティングを楽しんできました! ブドウ畑へ! No.7 接木 & 青空テイスティング INNESTO E DEGUSTAZIONE ALL'APERTO 春の兆しがしっかりと感じられる曇り空の下、2006年二回目の神戸ワイナリー訪問を 楽しんできました。 今回のテーマは接木。 いかにもマニアックな言葉のようですが、実はこの接木をしっかりするかしないかは ワイナリーにとっては将来のワインの出来を左右する非常に重要なブドウ栽培の 根幹を成す仕事ですので絶対に外すことは出来ません。 実は、1月に訪問したとき、神戸ワイナリーの末松さんに、 「次回は、接木をしましょうか」 といわれたときに、自分の耳を疑いました。だって、そんなことさせてくれるはずが ないと思い込んでいましたし、ほとんど想像すらしていなかったからです。 こうやって一年間のサイクルを節目節目で細かく見るために企画したこの イベントに対して本当に誠実に対応してくださる神戸ワイナリーの方々に大感謝です!! 今回は接木作業のためにいつもの畑ではなく、旧「キノコ館」に直行しました。 集合場所の神戸ワイン城の入り口から事務所のある場所を通って、キノコ館に向かう途中 ワイン城の壁のすぐそばにワラビが伸びているのを見かけました。 神戸ワイン城の壁横にみかけたわらび◎なんで接木するの? しかし、どうして接木する必要があって、何と何をどう接木するんでしょうね? 世界の醸造用ブドウ畑のブドウの木はほぼ100%が接木されたブドウの木です。もちろん ワインの歴史が始まったころはそんなことがなかったわけですが、この接木という概念が なかったがためにヨーロッパのワインが滅亡する危機に瀕した時代があったんです。 それが19世紀後半のことなのですが、アメリカから運び込まれたアメリカ原産のブドウの木に フィロキセラというアブラムシが寄生していた。 ![]() 接木作業の要領について説明される末松さん このフィロキセラが瞬く間にヨーロッパ中のブドウの木の根っこを食い荒らして、大惨事を 巻き起こした時代があったのです。いわゆる「フィロキセラ禍」です。 イタリアももちろん例外ではなくいくつかの条件の畑でその難を被らずに生き延びたブドウの木も 存在しましたが、すべての地方で被害はあった。 そしてこのフィロキセラ発祥の地でもあるアメリカ東部原産のブドウの木の根の部分=台木を 接木することによって、ヨーロッパブドウにも耐性ができることが判明したんです。 なので、ブドウのあるところなら、今や世界中にいるフィロキセラから身を守るためには この接木が欠かせないんです。 もちろん神戸ワイナリーにもフィロキセラはいます。根がこのアブラムシに食い荒らされると葉が 赤っぽく変色するそうです。接木しても100%大丈夫ということはないそうです。 そして今回の訪問で新たに分かったのは、フィロキセラへの対抗策としての接木のもう一つの 非常に優れた側面です。 それは、その土壌や気候に合った台木を接木することによって、それまでブドウの耕作が 難しかった土地でも素晴らしいワインができるようになったこと。また、既存の生産地でも 適した台木をセレクトすることによって品質が高まったことです。 さて、旧キノコ館に用意されていたのはメルローの穂木。そして台木はSO4。 SO4 とは、Seloction OppenheimNo.4の頭文字からめいめいされているのですが、 オッペンハイム国立ブドウ学校で選抜された品種ということです。 ![]() 一番右がSO4、残り3本がメルロー 台木品種の資料を見せていただくと、その品種ごとに様々なデータが蓄積されており 耐寒性、耐乾性、耐湿性、あるいは、発根、樹齢、収量、熟期、品質、着色、台負け 根群、葉止まりなどそれぞれの項目でその品種の特徴が記されています。 で、もっとも神戸ワイナリーの環境に適した台木がSO4である、ということになります。 耐乾性 ⇒ 強 耐寒性 ⇒ 強 耐湿性 ⇒ 強 着色 ⇒ 極良 品質 ⇒ 優良 など、様々な点で優れた台木がSO4であるとすぐにわかるのですが、ヨーロッパでは フィロキセラに対する耐性の弱さから避けられつつある、ということでした。 さて、今回のテーマは光栄にもその接木作業です! ![]() 20年前にドイツから輸入したという接木機 それぞれの穂木は前の晩から水にさらしています。これは冬で休眠中の 穂木を揺り起こすという意味があるそうです。このとき殺菌も施されています。 @メルローの穂木とSO4 をできるだけ同じ太さの幹で選ぶ A接木機を使って、双方の断面の面積を広くとって挿し木する。 SO4を20センチ計って・・・ ミシン台のような足を引っ掛ける部分があり、それをゆっくりと引き寄せると上部の 接木機の部分で穂木が綺麗な断面で切断され、挿し木される部分だけが接木に ひっかかるように残される。 次にメルローの穂木を同じ要領で切断すると、アラ不思議!二つの断面が合わさって 穂木がつながれます。 ![]() 上部と下部の挿し木部分が見えますか?上部がメルロー、下部がSO4です。 このカットだと接地面の面積が広く、接木がスムースに完了します。 A次にメルローと挿し木部分を蝋でコーティングして雑菌の介入を防ぎます。 ![]() 60℃〜70℃に熱せられた蝋で挿し木部分を浸すだけで瞬時にコーティングして 固めてくれます。 ![]() これで挿し木部分は完了です。 B発根部分の節にある芽を切り落とし、その部分から逆方向斜めに切断して 最下部の発根部分をつくります。 このとき鋏で切り落とした後、必ずカッターで断面をもう一度薄くスライスするように 切り落とさないと、断面が粗くなって発根しにくいそうです。 Cこれを鉢に差し入れ、発根部分を10センチほど土中に埋めて完成です。 ![]() これを一人に一鉢ずつもって帰らせてくださる神戸ワイナリーのお心遣いに大感謝です! でも、その後の神戸ワイナリーの方の言葉を聞いて唖然としてしまいました。 「これを、温度30℃、湿度100%の環境で30日貯蔵しておかないと根は出ません」 ・・・・・・・・・・ いったいどうやって、そんな環境を自宅で作れるというのだろう!? 「土が温かいというのが大事だから、鉢の部分は黒のビニールで覆っておいて 木の部分はガーゼを巻いて常にぬらしておくといいよ。あと、全体を透明のビニール で覆って、全体の温度が下がらないようにすればいいじゃない。根が出てきて 芽が蝋を突き破るように出てきたら、それだけでも万々歳ですよ!」」 途中から姿を見せられた三田村先生が半分茶化すようにニコニコして言われる。 つまり、自宅で醸造用ブドウを育てようなんて、そんなに甘い話ではない!ということ。 もちろん神戸ワイナリーはハウスというちゃんとした設備があるから問題はないのは言うまでも ないこと。 「いいですか。皆さんがんばって接木したブドウを育てて見てください。多分根は 出ません(笑)。それでも、あなた方がここまでわざわざ来て、ここで接木作業を したことは絶対に無駄にはなりません!ブドウ作り、ワイン造りがどれだけ大変な ことなのかを体で感じることがとても大切なことです。」 「そして、ワインを家で飲んでいるときに、ここで作業したことを思い出したときに ワインの味わいとここでの記憶がすぅ〜っとつながることがある。それがワインを 楽しむ上でとても大切なことです」 にこやかで軽快なしゃべり口ですが、三田村先生の言葉はいつも非常に重い。 誰にも体験できない貴重な作業をさせていただいて、しかも三田村先生ワールドに 浸れる・・・これワインを大好きになってて良かった!と思える瞬間です。 ![]() 完成品に名前をつけて、梱包作業と後かたずけは神戸ワイナリー醸造課の 安居さんにおまかせして(安居さん、ありがとうございます <(_ _;)>)、晴れ晴れと した気分で次なるテイスティング会場に向かいます。 ![]() 参加者は今回8名。もっと沢山の方にお越しいただき素晴らしい神戸ワイナリーの 世界を知って欲しい! 曇り空だったのですが、もうすっかり春の陽気が感じられる日でしたので、今回は ワイン城の中のレクチャー室ではなく、発酵タンクが立ち並ぶワイナリー横の外の 空間でにぎやかにテイスティングしました。 最初は、2004年と2005年のシャルドネの利き比べです。 2004年は、ステンレスタンクで発酵熟成させたもの。ブドウのランクはBランクもの。 2005年は、半年間樽発酵のあと、部分的にステンレスタンクに入れたもの。醸造課長の 高坂さんは樽熟期間をもう少し伸ばすか、延ばさないかまだちょっと迷っているということを 言われていました。 ![]() ステンレスタンクからワインをサービスしてくださる高坂課長と末松さん 一つ目のワインをテイスティングしながら、三田村先生が我々に質問されます。 「このワインをどう感じますか?美味しいですか?」 微笑んでらっしゃるが視線は厳しい。 「果実味があって、しっかりしててとても美味しいと思います」と参加者の一人が発言 されました。三田村先生はうなずきながら、 「口の中で、ワインの”硬さ”を感じて欲しいんですよ。このワインはとても礫の多い 畑で出来たシャルドネです。つまり、ミネラル質がとても豊富なんです!」 礫が多いということは、土壌が排水し易い。そして、根は地中深くに水を求めて伸びるので ミネラル質が豊富な層まで奥深く伸びていくことになる。これが、ワインがミネラル質になる 秘密です。神戸ワイナリーのシャルドネは酸と共にワインの個性であり、重要な”腰”となる ミネラルを豊富に含んでいることが分かります。 ![]() 右が2004ステンレスタンクBランク、左が樽熟成Aランク2005 確かに2004年は、砂や石のような香り・・・イメージしにくい人には・・例えば チョーク、石灰の匂い、そんな匂いが果実味とバランスよく含まれています。 ![]() 2005年シャルドネは、多少亜硫酸の匂いが目立ちます。これは、フレンチオークから ステンレスに移す際に亜硫酸を添加しているからで、醸造課長の高坂さん曰く 「長期熟成させる場合は、どうしても最初は少しずつ、少しずつで添加してしまうのですが 経験から学んで最初に一気に添加したほうが、最終的な味わいや香りの出方が良いこと に気付いたんです。」 亜硫酸の添加に関しては、量に関しては気になるところでしたが、添加するタイミングを どう調節するかについて伺ったのは初めてだったので新鮮でした。今後もっと知って行きたい ところです。 亜硫酸の香りを除けば、特に味わいで2005年が2004年よりも良い年であったことが 分かります。果実味や甘み、まろやかさでは2004年が良く出ていますし、ワインとしての 完成度も高いのですが、2005年にはまだまだコントロールし切れていない酸の強さを 感じさせました。 全体像としてはまとまりきれていませんが、これがしっかりとまとまり、溶け合うことによって 素敵なワインが生まれることは感じることが出来ました。三田村先生曰く、 「樽で熟成しているワインのこの香りと苦味を感じてください。下手なワインを樽熟成 させることは出来ません。良い年の良いブドウのワインだけを樽熟成させます。」 次は、神戸ワイナリーの最も偉大なワインである「リースリング」のテイスティング。 2004年と2005年。いずれもステンレスタンクでの発酵熟成。 ![]() 右がリースリング2004、左が2005 まだ3,4年はステンレス熟成させるという2004年には、すでにポテンシャルとしての 品格を感じます。 リースリングらしいアルコール感の滑らかさと、神戸らしい温暖な気候の滑らかな酸。 黄桃や洋ナシのコンポート、またフローラルな甘みさえ感じさせる豊かな味わい です。 これに対して2005年は、シャルドネ以上にこれからの変わり方をワクワク想像させる 力強さと背骨の太さを感じさせてくれます。 昨年の収穫やその前のブドウの畑ごとのテイスティングを経験しているので、昨年の ヴィンテージについてはある程度具体的に明確にイメージできます。つまり、葉も房も 粒も例年よりかなり小さなものが収穫できた2005年(台風がほとんど通過しなかった んです。降雨量は例年の10分の1ぐらいだとおっしゃっていました!) もうこの2本の神戸のリースリングには、心底うっとりです! 是非一度、試してみてください。コストパフォーマンスもハチャメチャに良い! 買ってみる!その後もロゼや赤ワインのテイスティングが続いたのですが、本当にごめんなさい<(_ _;)> なんせ青空テイスティングの爽やかな空気の中で、今回は完全にメモを取るのを 忘れてしまって、酩酊の心地よさの中にすべての記憶を葬り去ってしまいました(^^;) 大反省!! 「ワイン造りは甘くないよ!」と三田村先生 ![]() 高坂課長には、テクニカルな話から業界の裏話まで本当に色々と 聞かせていただきました! ![]() 最後に記念撮影 三田村先生(左から2人目)高坂課長、末松さん、安居さん(右3人) 今回、二つのことで大きな感銘を受けました。 一つは、この接木を行ってからワインができるまでの年月の長さです。末松さん曰く、 「3年後に幹をまげて、そこからブドウがなるように枝を伸ばすと10年、まともなワインが できるまでに15年はかかりますね。」 こういうことを飄々とおっしゃる(^^;) よく伝統芸など匠の技を磨くためには何年の修行が必要という言い方をしますが、ブドウは ひたすら外で風雨にさらされ、自然と対峙するわけですね。そしてその年その年のブドウを 神戸ワインの方が自らの経験と感覚を駆使してワインに育て上げていく。 伝統芸はひたすらに人間の業を感じさせる文化ですが、ワインはそこになんら抗うことの 出来ない自然といつも共存しているという深みと温かさを感じさせてくれる稀有の文化だと。 三田村先生が昔おっしゃっていたことを思い出します。 「がんばりすぎちゃいけないんです。だって、自然には従わなければならないんだから」 時間と自分の距離について神戸ワインにくるといつも深く考えさせられます。 もうひとつ感銘を受けたことは、一つ目のことと通じるのですが、神戸ワインの方が もっている自信の深さです。高坂課長曰く、 「色んな日本のワイナリーの方が、我々醸造について聞いてくるんですけど、うちは全部 包み隠さず教えています。どうせ、教えたって気候も土壌も違いますし、まねはできない。 それに、たとえまねをしても結果が出るのは10年、15年先ですから。その頃にはうちは もっと先を走ってる・・・」 なんちゅう自信に満ちた言葉でしょうね!! ワイン造りの凄さや怖さを如実に物語っている言葉だと思います。まねができない、そして 抗えないものには絶対に抗えない!! 今回も短い時間ながらいろんなことに気付かされ、感動できた神戸ワイナリーでした。 三田村先生、高坂課長、末松さん、安居さん、お休みの日に本当にありがとうございました! ここで、今回ご参加のお客様の声です! 神戸ワイナリーではいつも実際に葡萄を育てる作業を体験できるのが貴重であり幸せな 経験です。今回は接木を実際にさせていただきました。スタッフの方々はみなさん親切で、 いつも頭が下がります。また、タンクの中のワインや瓶熟中のワインをテイスティングできた のも素晴らしい体験でした。 実際にワインを作っている方のお話を聞きながらテイスティングできることは幸せの極みです。 大きな夢と理想を持っていらっしゃる神戸ワイナリーの方々とお話しできて満ち足りた気持ちに なりました。今回もたくさん飲ませていただきましたが、2004年のリースリングに最も感銘を 受けました。ほのかな甘みがあり、さらにきれいな酸味があるので心地よく飲めました。最初の 飲んだ2005のものも素晴らしいと思いましたが、その後にこれを飲むと、熟成によってさらに 深みが増していて、時間の経過によるワインの変化を如実に感じることができました。 次回も楽しみです。 京都市 笹山 等さん 三田村先生にいろんなお話しをしていただき、うれしかったです。 京都市 Y.N さん 接木という作業は、とても根気の要る作業であることを体験し、実感しました。
あの大事な苗は、温度の点では、会社が良いと考え、会社デスクの上で育てています。
それにしても、貯蔵タンクを目の前にしての、テイスティングはうれしい体験でした。
高坂さんの気前の良い指示で、次から次に未発売ワインを出して頂いたのには感動ものでした。
京都市 長谷川敏明 さん 接木なんて?見せて頂けるばかりの物と思って居ましたので
実際にやってみるなんて、ワクワクしました。
私の中に今まで全く無かった、リースリングへの興味には、火がつきました。京都市 M.Y. さん さて、次回からこのヴィーテ・イタリア「ブドウ畑へ!」もツークール目に突入します。とは いえ、まだまだ全然ワイン醸造の入り口に立ったというだけの話。これからもできるだけ 神戸ワイナリーに通わせていただき、ワインについての感性を磨いて行きたいと思います ので、あなたのご参加を心からお待ちしておりますね! 第一回 2005年5月 はじめての「ブドウ畑へ!」 第二回 2005年6月 副梢整理と誘引 第三回 2005年7月 ブドウ畑について尋ねる 第四回 2005年8月 色んな畑のブドウをテイスティング 第五回 2005年9月 発酵、圧搾、そして収穫! 第六回 2006年1月 アッサンブラージュと剪定 第七回 2006年3月 接木&青空テイスティング 第八回 2006年5月 芽かき&醸造現場テイスティング 第九回 2006年6月 誘引、巻き蔓除去、先端カット、副梢除去、花カス除去 第十回 2006年7月 酷暑の中の誘引、まきづる除去 パート2 第十一回 2006年8月 畑巡り&ブドウテイスティング 第十三回 2006年12月 『グラン・クリュ大沢(オオゾ)』へ 第十四回 2007年2月 2006収穫ワインのアッサンブラージュ 第十五回 2007年3月 冬季剪定&接木 トップへ 次回の「ブドウ畑へ!」 「ブドウ畑へ!」のヴィジョン 神戸ワイン 神戸ワイン ブドウ栽培日記 神戸ワインのショッピング
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