自分磨きのワイン術 その15 酸の生まれる畑 微気候って何? さて、前号で ついに『 酸 』を捉えました。 口の中にワインが入って、飲み込まれるまでの時間 → ミクロの時間 グラスに注がれたワインが変貌していく20分〜1時間 → マクロの時間 それぞれの時間帯で感じられる酸の質、そして好みを見分けましょう。 そしてできれば少し時間を置いてからの酸の変化に敏感になりましょう。 そんな内容でした。 今回は、前号の内容についての「なぜ?」について触れていきましょう。 より、理屈が分かりやすくなります。 つまり・・・ なぜ、「尖った酸」と「丸い酸」があるの? どうしてミクロもマクロも酸のレベルが変化するの? これを理解するには、やはり「ワインは畑でできる」という原則 そして醸造学の話をしなければなりません。 ○ 尖った酸 丸い酸 ワイン中に含まれる有機酸を分解する事によって理解できます。 尖った酸 → 葡萄にすでに存在する酸 → 酒石酸 りんご酸 クエン酸 ※この中でも特に尖っているのがりんご酸です。 食用の黒葡萄の皮をかじると、とっても鋭い酸を感じるでしょ? 醸造用葡萄は、それに輪をかけて酸っぱいです! 丸い酸 → 発酵の過程で生まれる酸 → 乳酸 コハク酸 酢酸 ※赤ワインの主な有機酸は乳酸です。 ↓ 乳酸発酵させない赤ワイン・・・酸っぱくて飲めたものじゃありません! 発酵したてのワインって、とっても酸っぱいんですよ! それも飲めないくらい! (↑重要ポイントよ!) この乳酸は、発酵したてのワインにあるりんご酸をさらに発酵を重ねて 「乳酸発酵」(マロラクティック発酵とも言う)を起こさせ、りんご酸から 変身させたものです。 つまり発酵を人為的にコントロールする事によってより酸の尖ったワインが できたり、酸の柔らかいワインができたりするんです。 発酵したてのワインの代表格はボジョレー・ヌーボーですよね。あの ワインは、特別な発酵法で乳酸発酵を早めたものです。ものによって 乳酸発酵を部分的に行ったもの、全部行ったもの、など様々です。 ここで質問です。 もしもあなたが醸造家なら、どんなワインに乳酸発酵をさせ、どんなワイン には乳酸発酵をさせずに尖ったりんご酸を活かしますか? 質問の意味、わかりますか? 一次発酵のあとの乳酸発酵をする、しない、でワインの酸の質を 尖らせたり、丸くしたりできるんです。 どんな時、酸を丸くしたいですか? そう、当然、酸が強く感じられるとき。酸が尖っているとき。ですよね。 じゃ、どんなとき、酸を尖らせたままにしておきます? そう!もとのワインの酸が弱いとき、ですよね! では、また質問ですが、葡萄の酸が強い、弱いって、何が原因 しているのでしょう? そう気候です。 寒い地域の葡萄 → 酸が強い! 温かい地域の葡萄 → 酸が弱い! こんな傾向があるんです。 とっても大きな枠での捉え方ですね。 海洋性気候(温暖)か内陸性気候(冷涼)という捉え方。 でも、例えば、南イタリアのワインは全部酸が弱くて、北イタリア のワインはすべて酸が強いのかというとそうでもない。 葡萄品種の特性もあります。→ 酸を多く含む品種があります。 畑の向きにもよります。 → 日当たり、風通しが違います。 日当たりが良いと葡萄の糖度が上がって 酸が減ります。 標高にもよります。 → 高いと気温が上がりません。 土壌にもよります。 → 水はけや色などによって熱の集め方が 変わります。 以上のような葡萄の生育に厳密に関わってくる畑による 気候のことを 微気候(びきこう) → ミクロクリマ と いいます。 もっと簡単にいうと、洗濯物が乾きやすい環境か(笑) いつまでたっても乾かない場所か、という問題。 有名で高価なフランスワインは畑ごとの表示がついていますよね? グラン・クリュとかプルミエ・クリュとかフランスワインの表示であり ますが、クリュとはまさに特定の微気候を持つ畑のことです。 微気候がいかにワイン作りに大きく影響するかを物語っています。 (神話的ですらある・・・・) 以上をまとめると・・・・ 1. ワインはできたてほやほやではリンゴ酸が強烈。 酸が持ち味のワイン(特に白)を除いて、乳酸発酵に よって尖ったリンゴ酸を丸い乳酸に変える。 2. 酸の質的レベルは、気候と微気候によって左右する。 さて、醸造学的な話=乳酸発酵、と、「ワインは畑でできる」 というワイン作りの原則=気候、微気候についてお話しましたが、 ここで酸をとらえるテイスティングにもう一度戻ってみましょう。 ※その1 ミクロの時間 (ワインを口に入れた瞬間から 飲み込んで余韻を楽しむ時間) E | | D | 強 | C | ----------------------→ さ | B | | A | | -------------------------------- アタック 時間 アフター ※その2 マクロの時間(ボトルを開けてから、グラスに注いで ワインが空気に触れている時間) | E | | 強 | C | ----------------------→ さ | | A | | | -------------------------------- 抜栓 → 5分〜10分〜20分 今、ワイングラス片手に読んでもらってます?(笑) ワインを口にして、酸を感じてみてください。 おそらく、今市場に出回っているワインは、もう2000年代の ワインじゃないでしょうか? 1990年代後半のものもあるかな? え?あなたリッチ? 80年代のワイン?(笑) 90年代のしっかりとしたボディーのワイン、そして 2000年代のワインであるならば、ほぼ酸のレベルは、D E あたりに感じられるはずです。 強い酸を感じて、唾液の分泌もあるでしょう。 ミクロ時間の中で、その力が最後のアフターまで衰えず、しっかりと 長く感じたなら寒い地方の微気候的にも酸を強く出す畑で育った 葡萄のワインでしょう。 ミクロの時間の中で、アタックに強烈な酸を感じ、アフターで やや落ち着いた心地よい印象をうけたなら、それは寒い地方の 産地、または出来立ての若いワイン、そして、畑の微気候が 優れていた可能性大です。 微気候のすぐれた環境では、酸以外の要素もしっかり葡萄が 吸い取っているので、マクロの時間帯に影響がでてきます。 ワインが空気と触れ合っている時間。酸化の時間。 つまり、酸素とワインの酸と影響しあって、全体像を我々の味覚に 心地よい方向に変えていくのです。 ミクロとマクロ、双方のアプローチで酸の質、酸の強度のベクトルを 思い出してそのワインの葡萄が育った環境について、つまり作り手 としての人間が自然環境との共同作業でどれだけブドウ栽培に力を 注いできたか、想像してみましょう!! これは、「自分磨きのワイン術!」のもっとも重要なシークエンス であり、味わうべき醍醐味、と僕は思っていますので、また最終章で きっちり説明しますね! 産地がどこか、を必死になって考える必要はない。あれは ソムリエ・ゲームだと思ってください(笑)。 大切なのは、そのワインの葡萄が太陽を一杯浴びたのか、それとも 不足していたのか、そして、どんな酸を作り手が創造しようとしていたか を想像することです。 だから、あなたはワインを口にして、その酸を感じたら・・・・ 「あ、これって尖っているから寒い地方(畑)のワインかも・・・」 「柔らかい酸だなあ・・・・温かいところのワインかな・・・・・・」 「心地よい酸だなぁ・・・この酸をワイナリーは目差していたんだなぁ・・」 そんな風に予想してみてください! 別に産地を当てる必要なんてありません。 (まだ、できないですね!(^^;) ただ、そのワインの葡萄が太陽を一杯浴びた葡萄なのか、酸の レベルで思い描いてみるのです。 でも、様々なワインを飲んでいるうちにあなたは気づいてくるはずです。 そう単純な(簡単な)ことじゃないだろう!!って(笑)。 つまり、こういうことに気づいてくるのです。 「めちゃくちゃ、強い酸、それも同じように質が尖った酸でも 心地よく感じるワインと、単に酸っぱいワインがあるじゃないか!!」って。 もう、どないやっちゅうねん!! おこるで!しかし! わからんで!! 正味のはなし・・・・!!(横山やすし風で) そうなんです! ぼくは何度か、「尖った酸」「丸い酸」という客観的な表現の 他に「心地よい酸」「穏やかな酸」というように、やや主観的、 印象的な言葉を使ってきました。 酸を評価するときに、できる限り酸そのものを凝視することも 大切ですが、ワインの味わい全体の中の酸を意識すると 酸をとっても強く影響しあっている要素を忘れるわけには 行かないんです。 酸と常に影響を与え合っている味わいの要素。 何でしょう? 思い出して下さい。 以前、「ボディーについて」で骨と筋肉の話をしました。 骨は 酸、タンニン、 塩 筋肉は、糖分、アルコール、なめらかさ でした。 そうです。酸と強く影響を及ぼしあうのは、この筋肉部分。 つまり、「心地よさ」の源は、酸とこの筋肉部分の関係性から もたらされた、と考えられるわけです。 え?なんか、まどろっこしい表現してます? 要は、単にスッパ〜〜!!というワインでも、筋肉部分が 酸ときっちり結びついていると、穏やかになってくる。 酸のトゲを筋肉が被ってくれて、柔らかく感じる。 口の中の香りの要素もあるでしょうね。 それにしても、筋肉部分とのバランス、一体感、これを 抜きには「心地よさ」「穏やかさ」は得られないでしょう。 ということで、次回は、この「ワインの筋肉」についてレクチャー していきましょう。 質問箱は info@viteitalia.com までどうぞ!! |