![]() イタリア土着ブドウ辞典 イタリアの代表的葡萄から超ローカルな土着葡萄まで、ご紹介していき ます。葡萄品種の特質を知ることによって、その土地の風景から、その 生産者の思い、ワインの味わいの世界までもが見えるようになります。 No.4 バルベーラ Barbera
◎「ワイン用葡萄ガイド」(ジャンシス・ロビンソン著)からの抜粋 生産性が高く、多目的に使うことの出来る品種。イタリアで最も多く栽培されている黒ブドウ品種のサンジョヴェーゼ種とはいろいろな意味で競合した。バルベーラ種のイタリアにおける作付け面積は1990年には約50000ha。その栽培は広域に伝わり特に南北アメリカ諸国に広まっている。 バルベーラの成熟は、それより劣性の黒葡萄品種であるピエモンテ地方のドルチェットより 約2週間ほど遅く、貴品種であるネッビオーロよりは早い。その主な特性は、葡萄がたとえ充分に熟したとしても、暑い気候の栽培地で好まれる自然な酸を充分に残すことが出来る点にある。 この品種はイタリア全域で長い年月をかけて順応させられたため、その地方なりの亜種を生み出している。 原産地だと思われるピエモンテ地方では、ほとんどの年にワイン総生産量の半分以上をこの品種から造り出している。様々な栽培地で造られるワインは比較的タンニンが柔らかく酸度は高いが、そのスタイルの幅は広く、軽くて酸っぱいものから若々しい発泡性を持たせたもの、そしてオーク樽を使用して、長期間寝かせる必要のあるパワフルで濃厚なものまで様々である。 新しい樽の使用は、ブリッコ・デッルッチェッローネを造ったジャコモ・ボローニャが創始者だが、バルベーラの比較的中庸な香りにスパイシーさを加え、オーク材のタンニンによって葡萄の酸味を緩和している。 最もsぐれたワインの幾つかは、バルベーラ・ダルバ地域のアルバとモンフォルテ・ダルバの南北にある丘陵で栽培される葡萄と、バルベーラ・ダスティ地域の葡萄畑の中でもニッツァ・モンッフェッラートから北西に向かうヴィンキオ、ベルヴェーリオ、ロッケッタ・ターナロで栽培される葡萄から造られる。 バルベーラはロンバルディア州では支配的な品種で、特にオルトレポ・パヴェーゼの葡萄畑で栽培されている。多様な質のワイン、様々な発泡度合のワイン、良質でイキイキとしたワインなどのヴァラエタルワインを造ったり、またその土地で育つソフトな地場のクロアティーナ種またはボナルダ種とのブレンドも行っている。 この品種はフランチャコルタにも少量使われ、イタリアの他の地域でも見られるように、数多くのベーシックなヴィノ・ダ・ターヴォラに用いられている。(略) ◎ヴィーテ・イタリア高岡的見解 僕がローマのソムリエ協会でワインを勉強していたとき、やはり上述のジャコモ・ボローニャは バルベーラの神様みたいな扱いを受けていたように思う。 実際にお会いすることはできなかったが(91年に他界、「ブリッコ・デッルッチェッローネ」は90年までジャコモ・ボローニャ氏の作品。その後は息子のジュゼッペ氏が醸造責任者)、それまで単なる ローカルワインの代表格だったバルベーラ種をインターナショナルなマーケットにも充分通用するワインにした貢献度は計り知れない!! ん?インターナショナルなマーケットに通用するワイン?ナニ、それ? という人、ご心配なく、超簡単にご説明しましょう!! 色が濃くて、香りがフルーティー、できればスパイシーさなど複雑な香りはあるけどその 中心はフルーツの甘い香りで、味わいは、酸、タンニンがしっかり、アルコール感としっかりと バランスがあって、一体感があって、余韻にも樽熟成から来る心地良いほろ苦い感覚が残る。 そんなトータルにある一定のレベルを保つワインが評価される。ある種の「飲みやすさ」と 「飲みごたえ」が同居しているワインですね。 じゃ、バルベーラワインは、そういうワインじゃなかったのかというと、そういうワインじゃなく 単なる「栄養源」として地元で消費されるワインに過ぎなかった。 じゃ、なんでそんなワインが北イタリアで一番生産量が多いのかというと、まさに「生産性」の 素晴らしさにあるようです。つまり、どんなヴィンテージでもある程度の質の葡萄を大量に生産することができる葡萄。戦後から70年代、80年代にかけての質より量の時代にあっては、バルベーラの隆盛は当然といえたわけです。 ネッビオーロの本拠地であったピエモンテ地方でも、18世紀末からのフィロキセラ禍によって 死に絶えたネッビオーロの樹に代わって、もてはやされたのがバルベーラ。いわば、「貧しいイタリア」の象徴的な葡萄品種ともいえる。 ところが、じゃ、バルベーラはなんで田舎ワインに甘んじていたのか? どうして、何が欠けていたために世界に認められるワインにはならなかったのか? そこに着目して質の高いバルベーラ醸造を行ったのがジャコモ・ボローニャさんなんですね。 上の赤字のインターナショナルなワインの定義から見たバルベーラ、なんと欠けているのは実は タンニンだけだったんですね。 色はもともと濃い。香りはフルーティーとは言えないまでも、収穫量を減らして畑から改良していけばどんな葡萄だってフルーティーになる。酸はイタリア品種でも屈指の強さを出せる。アルコールはどれだけ葡萄を熟れさせるかの問題。とすると、のっぺらぼうのタンニンに関して何とか解決する方法はないのか、と試行錯誤して行き着いたのが、当時ではまだ一般的ではなかったフレンチオークのバリック樽(225リットルの小樽)の使用。 これは、樽の内側をローストしてワインにその香りを付着するだけではなく、大樽よりもワインと樽との接点の比率が高まるため緩やかな樽を通した酸化によってワインに高貴な甘みや香りを与えると同時に、なによりもオークからのタンニンを熟成中のワインが吸ってくれる。 樽からのタンニンをワインが抽出し、自らのボディーに取り込むことによって、完璧なボディーを 備えることが出来る。これがジャコモ・ボローニャの偉大な発見です。 故ジャコモ・ボローニャ氏のワイナリー、ブライーダ社のサイトはコチラ さて、ブリッコ・デッルッチェッローネのファーストリリースが82年(すでに実験的に79年から生産されていた!)、それから23年の歳月が流れたわけですが、いまやバルベーラはバローロ、バルバレスコの王座を奪わんとする勢いがあります。 これは単純にワインジャーナリズムでの評価を基準に言っているのですが、この高い評価はバルベーラの持つ二つの側面から生まれたものと思われます。 一つは、先ほどから触れているバルベーラの生産性ではないでしょうか。 ネッビオーロがとても難しい品種でヴィンテージによる品質のさも出やすいのに比べ、バルベーラは常に良い生産性を維持します。畑におけるマネージメントさえしっかりしていれば良好な結果が出ておのずと評価が高まる。ネッビオーロの不安定に比べるとバルベーラは安定していて生産者からも高い支持がある。なので、品質の高いバルベーラがどんどんとリリースするという良い循環がうまれている。 もう一つは、ピエモンテにおけるバルベーラの歴史的ポジションに起因するのではないかと思います。 つまり、バルベーラはネッビオーロ種に比べると、全くといっていいほど「質の高いワイン」を造ってきた歴史的経験がありません。逆にネッビオーロは数世紀にわたってピエモンテナンバーワンの座を守ってきた葡萄です。 それに比べると、バルベーラは守るべきものがない。 つまり、ネッビオーロのように、やれ「こんな樽のかかったワインはネッビオーロなんかじゃあねえ!フレンチオークなんかクソ食らえだ!!」と卓袱台をひっくり返されることがないのです(笑)。 バルベーラはもともと、そんなにピエモンテ人のプライドをかけて造られた葡萄ではないので、スタイルに関して自由にできる。 新しいスタイルに関して、「質の伝統」がない分、伝統主義者からのバッシングがほとんどないないのです。 つまり新しい作り、スタイルをどんどんと導入して、しっかりとした「果実味」を出したフレンチオーク熟成のワインを時に様々な国際品種と混ぜながらも生産することが出来る葡萄、それがバルベーラと言えそうです。 いわば、「水を得た魚」状態ですね(^^;)。 もちろん昔ながらのつくりをしたワインもまだまだたくさんあります。 僕は、昔「バルベーラ・デッラ・ロンバルディア」とラベルにあったマグナムをミラノのとあるトラットリアで飲んで、その美味しさに感動したことがあります。 もちろん、マグナムといっても多分、一本せいぜい千円もしないような代物でしょう。今飲めば、それはそれは不味いものかもしれませんが、かつて(ワインを勉強する前)に慣れ親しんでいたローマのワインに比べると格段に美味しかったことを記憶しています!(^^;)。 なので、僕はバルベーラはこの素朴さのバルベーラと洗練のバルベーラの双方を楽しんでこそ初めてバルベーラらしさを知ることになるのではないかと思います。 色んな葡萄について同じことが言えますが、特にバルベーラ種は「イタリアワインの近代史を飲む」という意味で、意義深いものがあるように思えます。 トップへ ネッビオーロ アリアニコ サンジョヴェーゼ バルベーラ ドルチェット モンテプルチャーノ ガルガーネガ ヴェルディッキオ モスカート・ビアンコ |