![]() イタリア土着ブドウ辞典 イタリアの代表的葡萄から超ローカルな土着葡萄まで、ご紹介していき ます。葡萄品種の特質を知ることによって、その土地の風景から、その 生産者の思い、ワインの味わいの世界までもが見えるようになります。 No.3 サンジョヴェーゼ Sangiovese
陰干しされたサンジョヴェーゼ
◎「ワイン用葡萄ガイド」(ジャンシス・ロビンソン著)からの抜粋 イタリアで最も耕作され、特に中央イタリアで一般的で非常に 多彩な赤品種。1990年に、サンジョヴェーゼ系の何らかの葡萄が、 イタリアの葡萄総栽培面積のほぼ10%に当たる100.000ha 以上を占めた。 そのワインは注目に値するタンニンと酸を備え、常に深みのある 濃い色とは限らないが、品質と成熟度により、動物的な比較の匂い からプラム、プルーンまで異なった香りの個性を持つ。(略) サンジョヴェーゼは、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノに唯一許されて いる品種であり、キャンティ、ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノと いったブレンドのベースワインとなり、そしてスーパータスカン(概ね非常に 高い価格の付いた洗練されたブレンド)の主要な葡萄である。 ウンブリアで広く栽培され、そこの最良のワインにはトルジャーノ、モンテ ファルコがある。 マルケではこの品種はロッソ・ピチェーノのベースであり、ロッソ・コーネロ の重要な構成要素でもある。 サンジョヴェーゼはラツィオでも栽培され、北はロンバルディアとヴァルポリ チェッラから南はカンパーニアまではるか離れたところでも見ることが出来る。 葡萄そのものは恐らくトスカーナ原産で、その名前の文字通りの訳 ”ジュピターの血”が示唆するように古代に起源を発し、エトルリア人すら この品種に馴染みがあったとも言われる。 ![]() キャンティ・クラッシコ及びスーパータスカンの 優良生産者、フォントーディ社のサンジョヴェーゼ畑 しかしながらこの品種が歴史上初めて記述されたのは、18世紀初頭で あるが、バローネ・リカーソリによる19世紀のキャンティのレシピの主要な 原料であった。(略) サンジョヴェーゼは遅く成熟するために、暑い年には濃厚でアルコール分 が高く、長期熟成に耐ええるワインを造り、冷涼な年には、酸が高くタンニン が強くなるという問題が生じる。 過剰生産によってはワインの酸がいっそう強められ色が薄くなりがちで、 またやや早く褐変が始まる。薄い葡萄の果皮は、涼しく湿気の多い年には 腐敗菌に冒されやすく、秋には降雨が多い地域においては不都合である。 サンジョヴェーゼ・ディ・ロマーニャのワインは、典型的に軽くて赤の ありふれた早飲み用としてそれなりに評価されている。ロマーニャで 最も広く栽培されているサンジョヴェーゼは、トスカーナで敬われて いるクローンとはほとんど共通点はないが、しかしこの状況は改善され つつある。 イタリア南部でもサンジョヴェーゼはいくらか栽培されており、地元の 葡萄とのブレンド用に使われる。 ![]() ブルネッロ・ディ・モンタルチーノを代表する アメリカ資本ワイナリー、カステッロ・バンフィ ◎ヴィーテ・イタリア高岡的見解 キャンティ・クラッシコについて フィアスコという言葉をご存知だろうか。 とあるボトルの名前なんです。例えば・・・・・ ← この形のボトルは「ブルゴーニュ型」。なで肩ですね。ブルゴーニュのワインは伝統的に瓶熟成で「澱」が 出にくいのです。 ← この形のボトルは、「ボルドー型」。いかり肩です。ボルドーのワインは色素がしっかりしているので 瓶熟成と共に澱が沢山出てきます。ボトルからグラスに ワインを注ぐときに角張った肩の部分に澱が溜まって くれてグラスに澱が入るのをある程度防いでくれます。 両者ともにそのワインの質に深く関ったボトルの形状です。 で、フィアスコなんですけど、こんなボトルのことです。 ↓ ![]() そう、藁篭で覆われた丸いボトル。ちょっぴり安っぽいイタリアンなんかで ステレオタイプ的に置かれちゃったりしています。 でも、このボトルこそ、サンジョヴェーゼの故郷ともいえるキャンティの 典型的なボトルの形状なんです。 昔懐かしいイタリアワインの象徴、とでも言いましょうか。 でも、このボトル、現在の先進的なキャンティ・クラッシコワイナリーは絶対 に使用しようとしません。 だって、「まずいキャンティ」のシンボル、みたいになってますからね(^^;)。 大量生産時代に圧倒的数量で出回ってしまった負の歴史を背負ってしまった ボトルなんです。 かわいそうに・・・・。 「フィアスコ」というイタリア語のボトル名・・・・他にどんな意味があると思います? なんと、 「できそこない」 とってもユニークで、懐かしさすら感じさせてくれるボトルですが、こうした ネガティブなバックボーンがあるんです。 またこの篭はとうもろこしの皮で作られるらしいのですが、その篭職人 いなくなりつつあるそうです。 一抹の悲しさを感じさせますね。 いっそのこと、このフィアスコ・キャンティですごいキャンティを作ってくれる ワイナリー、現れないかな・・・・。 フィアスコのトレビッキエーリ「キャンティ」とか(笑)。 ボトルのことはさておき・・・ サンジョヴェーゼほど、1970年代までに席巻した「大量生産ワイン」の 傷を現在に見事に克服した葡萄品種はないのではないかと思います。 これはひとえにトスカーナ人のマーケティング力と常に外国資本との競合 を強いられるトスカーナという土地柄、そして何よりも傷ついたキャンティの 汚名を返上しよう強く望んだ生産者の熱意の結晶といえることができます。 例えば、イタリアワインファンのあなたなら ← このマークをご存知でしょう。そう、キャンティ・クラッシコの「品質保護協会」の雄鶏マークです。 このマークを見たら「ああキャンティ・クラッシコね!」と知ったかぶりする 人がいるのです!!というか、何であんたが知ってんの?と言いたくなる ような人でもこのマークを知っているのです(^^;)。 そのようなマークは他のイタリアワインにあるでしょうか? ないと思います。 この雄鶏マークと共に、キャンティ・クラッシコは、「まずいキャンティ」 の汚名を返上し、イタリア屈指の、いえ世界でも指折りの質的ワイン 産地になりました。 もう、「まずいキャンティ」は過去のこと・・・・・と思えるくらい、ひどいワインに 当たらなくなりました。 これは、底辺のサンジョヴェーゼの潜在的な力がアップしたからに他なり ません。そして、その質的向上をマーケティング戦術とともに常にリードして きたのがキャンティ・クラッシコ品質保護協会、といえます。 96年から、新しいキャンティ・クラッシコの法律が施行されました。 伝統的にキャンティはサンジョヴェーゼの里ではあるのですが、文化的 には「ブレンド」文化なんですね。 ようするにカナイオーロというブドウを混ぜたり、あるいは甘口に作った トレッビアーノ種やマルヴァジア種を混ぜていました。 ひとえに、サンジョヴェーゼの酸とタンニンの力強さゆえです。あまりにも 酸っぱかったり、渋かったりするとやはり「美味しく感じない」ものです。 カナイオーロはほとんど香り付けと酸とタンニンを「薄める」役目。 だからサンジョヴェーゼは主役でこそあれ、脇役あっての主役ですね。 ピエモンテ地方、あるいはブルゴーニュ地方が単一ブドウで醸造してきた 歴史とはこの点で相違があります。ピエモンテやブルゴーニュはいわば ブドウ品種の「独断場」でもあります(笑)。 だからキャンティは96年まで、サンジョヴェーゼ100%が認められて いませんでした。 (それでも100%サンジョヴェーゼでクラッシコを名乗っていたメーカー をいくつか知っています(^^;)。イタリアらしいですね) ならば96年からのキャンティ・クラッシコは「サンジョヴェーゼ100%で なければならない!」という法律になるかと思いきや・・・ 100%でもOK!! でも15%までフランス葡萄も混ぜてもいいよ!!(^^) という法律になっちゃいました。 ガガ〜〜〜ン!! な、なんで?! これほどまでにサンジョヴェーゼの潜在能力が高まった今日、もう 100%で行っちゃってもいいんじゃないの?カナイオーロはおろか フランス葡萄もOKだなんて、法律改正が本末転倒じゃない!!? という僕の感情論は、やはり時期尚早、素人的な考え方だったようです。 当時、キャンティ・クラッシコ品質保護協会の事務局長はこんな風に 釈明されていました。 「これはひとえにサンジョヴェーゼの生産性の問題です。つまり、いくら サンジョヴェーゼの潜在能力が上ったとはいえ、それはまだ限られた 生産者のクローンだけということもできますし、またサンジョヴェーゼは ヴィンテージごとの品質の差が大きく出る品種なのです。 この点は、まだサンジョヴェーゼはカベルネやメルローの域ではないのです。 ということは天候に恵まれないヴィンテージにリスクを犯すことは最小限 にしておかなければなりません。 フランス品種はその点、品質が気候によってぶれることが少ないのです。 そういう意味で、サンジョヴェーゼにフランス品種を混ぜることを許可した ことで、サンジョヴェーゼの出せる質を維持することができる。 キャンティ・クラッシコとしての質を保つための最低限のブレンドを許可 したことで、生産者ごとの色がはっきりと出るでしょうし、質的には向上 し続けるに違いありません」 かたくなに厳しい法律を作って自らの首を絞めるよりも、ある程度の 自由さを盛り込んで生産者の独自性を尊重する。 非常に現実的なトスカーナ人のアプローチだと、思います。 それでも最低ラインの法律は以前と比べてとても厳しく厳密になって います。 フランス葡萄と共存することでサンジョヴェーゼの良さが確認されていく。 そういうキャンティワインの進み方は、ピエモンテのものとまったく別世界で そのコントラストは面白いと思う。 ブルネッロ・ディ・モンタルチーノについて ![]() ジャンシス・ロビンソンも触れていますが、サンジョヴェーゼが最もその 能力を発揮する土地がモンタルチーノ村を中心にしたブルネッロ・ディ・ モンタルチーノDOCGです。 なんたってサンジョヴェーゼ種100%を義務付けた輝かしい唯一の DOCGですから。 サンジョヴェーゼ真髄に触れてみたい!! 霊感に満ちたサンジョヴェーゼワインを一度でも!! という方には、是非是非ブルネッロ・ディ・モンタルチーノをオススメしたい。 ネッビオーロ種のバローロと並んで、イタリアワインのトップに君臨する! と僕が豪語しても誰も文句は言わないはずです。 でも、このブルネッロについても法律的に紆余曲折があります。 今度はブレンドのことではなく熟成期間についてです。 僕が持っているイタリアソムリエ協会のENOGRAFIAという資料には ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの熟成期間が50ヶ月。このうち僕の記憶 では、樽熟成期間が最低3年半でした。 この資料は95年のものです。 ところが98年ヴィンテージからこの樽熟期間が2年に減らされました。 な、なにごと!! 樽熟期間が減れば減るほど、ブルネッロらしい熟成香が 失われるではないか!! そんなに基準下げてでも楽してブルネッロの名前が 欲しいんか!! 怒・怒・怒・・・・・ と、その法律改悪に、僕は怒ってたんです!! (僕が怒ったところで何にもなんないんですがね・・・・(^^;) でも、熟成期間が短いということは、それだけひ弱な葡萄でもOKという ことですし、当然熟成から来るブルネッロ独特の動物やタバコのような香り がなくなる訳ですよね。 で、モンタルチーノ村名誉市民、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの日本輸入 に最も貢献された輸入業者社長に言ったんです。 「Sさん、どない思わはります?ブルネッロがたった2年の樽熟なんて 許せまっか・怒?!!」 ⇒(京都弁でまくし立てたかどうかは定かではない・・・) 僕は当然Sさんが同意してくれるものとばかり思ってました。そしたら・・・ 「いいんじゃない・・・・あくまでも最低の数字なんだから。まともな ワイナリーは2年で熟成終わらせるようなことしないよ」 と軽くあしらわれてしまいました(^^;)。 う〜〜む。やはり現地の生産者と常に近いところにいる人は言うことが 違うなあ!! でも、このあたりにイタリアワインの本質的な姿も見え隠れすると思いませ んか? つまり、DOCやDOCGというのはその土地にあるその土地のワインを保護 するために出来ているわけで、ワインそのものの本来的な質とはすこし 次元が違う。 質にこだわった立派なワインを造るワイナリーはワイン法を全く無視する、 または、ワイン法よりももっと厳しい基準で醸造します。 そして、お国が定めた認めた法律を守るワイナリーよりも、自らのポリシー に従ってワイン作りをしているワイナリーのワインを購入した方が よほど幸せな場合が多いのです。 となると、我々消費者の方も、注意深くワイナリーの動向を監視する必要 がありますし、テイスティングの技量も磨いていかないと、とんでもない 大金をまずいワインに支払わされることだってありえるんです。 で、樽熟成期間が2年に減った。 この事実も、先ほどのキャンティ・クラッシコがフランス葡萄とのブレンドを 許可したという部分に重なってきます。 つまり、まだヴィンテージによって品質に差が出てしまうサンジョヴェーゼを あまりに長期間樽熟成してしまうと果実味が失われ、酸化香が顕著に なりすぎる。 より果実味のある「現代的な」ワインを世界に向けてリリースしていかな ければブルネッロ・ディ・モンタルチーノの未来はない・・・・そういう危機感が 生産者側にあると思います。 だから安易に、熟成期間を短くしてさっさとリリースしたいという身勝手な ビジネス的便宜からできた法律ではないです。 その点は、樽熟期間が最低2年でもリリースまでのトータルの期間は 今までと変わらず5年になっていることからも伺えます。 樽熟期間が減ったとはいえ、5年という数字はイタリアワインでは最長です。 あの「ワインの王」バローロでさえ3年です(樽熟期間は同じく2年)。 つまり、イタリアワインの中で最もワインの熟成した姿が楽しめるのが ブルネッロ・ディ・モンタルチーノということが出来ます。 そして、その熟成期間に耐えうる強靭な葡萄サンジョヴェーゼは、モンタル チーノ村でしかできない。 サンジョヴェーゼの底力が最大限に発揮されているのが、ブルネッロ・ディ・ モンタルチーノである、といっても過言ではないでしょう!! トップへ ネッビオーロ アリアニコ サンジョヴェーゼ バルベーラ ドルチェット モンテプルチャーノ ガルガーネガ ヴェルディッキオ モスカート・ビアンコ |