イタリア土着ブドウ辞典
 
 イタリアの代表的葡萄から超ローカルな土着葡萄まで、ご紹介していき
 ます。葡萄品種の特質を知ることによって、その土地の風景から、その
 生産者の思い、ワインの味わいの世界までもが見えるようになります。


  No.8  ヴェルディッキオ  Verdicchio

同義語:ヴェルドーネ、ヴェルディッキオ・ドルチェ、ヴェルディッキロ・ヴェーロ、マリーノ、ペローゾ、ヴェルゼッロ、マルキジャーノ、トレッビアーノ・ヴェルデ、ウヴァ・アミネア、ウヴァ・マラーナ、ヴェルディッキオ・ジャッロ、ヴェルディッキオ・ストレット、ヴェルディッキオ・ペローゾ
歴史:マルケのプレステージの高い土着ブドウ品種。その起源は不明だが、とりわけエシノ渓谷での耕作に関しては、非常に古い歴史があると、すでにコルメッラによって引用されている。(註:ローマ時代の農学者)
特徴:中位の葉、五角形か球状。三列葉か五列葉。裏表ともに無毛。色は暗い緑色。房は中ぐらい、筒型か円錐形筒型。ものによっては翼を広げたような形でピラミッド型で粒がぎっしり詰まっている。粒は中ぐらいで皮は薄いがしっかりしている。色は黄で蝋粉の量は中ぐらい。
樹勢: 中庸かそれ以上
生産性:一貫性がなく、しばしば乏しい   
成熟: 9月の第一週、第二週
    
◎マルケ州の主にヴェルディッキオ種を使用するDOCワイン


◎「ワイン用葡萄ガイド」(ジャンシス・ロビンソン著)からの抜粋






イタリア中央部のブドウで多くの亜種を持ち、アドリア海沿岸では伝統的なヴァラエタルワインを造る。最良なものはレモンの酸味とアーモンドのほろ苦さを持つが、最も出来の悪いものはただ酸っぱいだけの辛口ワインとなる。1990年代初期の総栽培面積は4000Ha弱であった。

◎ヴィーテ・イタリア高岡的見解
しかし、右上のジャンシス・ロビンソンのガイドの中で、このイタリアを代表する
白ブドウ品種の扱いがこれほどまでに小さいことに驚きを禁じえません。確かに
この本「ワイン用葡萄ガイド」は1990年の資料を基に書かれているものですが
いかにここ10年ほどでヴェルディッキオの地位が向上したか、逆に言うと15年程
前の書物では、ほとんど相手にされていないほど、無名であったかが伺い知れ
ます。


ヴェルディッキオは、マルケの土着葡萄と断定して良いわけですが、ワインの
銘柄としての2大DOCをジャーナリズムの注目を集めたヴェルディッキオとともに
ここでご紹介しておきましょう!

● ヴェルディッキオ・ディ・マテリカ

 ラ・モナチェスカ社のヴェルディッキオ・ディ・マテリカ ラ・モナチェスカが
ガンベロロッソ誌の「イタリアワイン年鑑」でトレビッキエーリを授賞したのが
たしか95年。

 ちょうど、僕がローマでワインの勉強をしていた頃でした。

当時は、ガンベロロッソ誌の一大キャンペーンで「イタリア土着葡萄」が
非常に脚光を浴び始めた頃で、同誌のダニエーレ・チェルニッリ氏を筆頭に
大きなテイスティング会、シンポジウムを行ったものでした。

ヴェルディッキオ・ディ・マテリカがトレビッキエーリを授賞したときの正直な
感想は、

 「え?これがトレビッキエーリ?そんでええの?」

という感じでした。

 なんせ樽熟成もしていない非常にシンプルな白ワインでした。当時は
イタリアにおいてバリック(225リットルの小さな樽)黎明時代でしたから
樽香プンプンの思わせぶりなワインが多かった中で、確かに異彩というか
シンプルさの中にある、ほぼ完璧なボディーの一体感と味わいの個性が
新鮮であったことは否めませんでしたが、シンプルなだけにそれを充分に
理解していたか、当時の僕のテイスティング能力ではかなり???です。

 それにしても、こんなにシンプルなのに?

 僕の疑心暗鬼は晴れませんでした。というか、「これこそイタリア魂よね!」
って、自分に言い聞かせるようにしていた記憶があります(^^;)


 その後、ヴェルディッキオの素晴らしさをはっきりと自覚したのは、帰国後、縁あって
ネゴシアンに僕が働いていた京都のリストランテにお越しいただきワインメーカーズ
・ディナーを開催して、このモナチェスカ社の
ヴェルディッキオ・ディ・マテリカ「ミルム」
飲んだ時です。

  

 遅摘みしたヴェルディッキオをステンレスタンクで長期間熟成した類稀な
 ワインでした。

 誰もがバリックによってイタリアワインの真価をインターナショナルなマーケットに
向けて問うていた時代、ステンレスタンクで長期間熟成したワインというスタイルに
まず感銘を受けましたし、ヴェルディッキオの持つ潜在能力と個性の表現世界が
どのイタリアのブドウにもないものがあるとこの時確信しました。


● ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージ

 それから数年後に訪れたヴィニ・イタリー(毎年4月に開催されるイタリア最大のワイン
見本市・ヴェローナで行われます)で、僕がびっくりしたのは、同じヴェルディッキオで
銘柄の違う同じマルケ州のワイン「ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージ」
でした。

 ステンレスタンクのみで熟成させたワインで、一躍世界の脚光を浴びたワイナリー
ガローフォリ社の「ポディウム」でした。

 

 ガローフォリ社は同じヴェルディッキオでも「セッラ・フィオレーゼ」というバリックで
 熟成させたバージョンを持っていますが、より純粋無垢なヴェルディッキオらしさという
点では、断然ポディウムに軍配が上ります。

 (ただ、抜栓して少し酸化させた具合の「セッラ・フィオレーゼ」はブルゴーニュの白に
  匹敵する質感が出ます!)

 色んなヴェルディッキオが存在していますが、これらトップクラスのヴェルディッキオに
 共通する味わいの特徴は、苦味とアルコールから来る甘みが比較的しっかりしていて
 そこに強いミネラルと酸が拮抗してくる、という感じです。

 特にヴェルディッキオ・ディ・マテリカは、ミネラル分が豊富で、ほとんど「しょっぱいワイン」
 という形容をしても良いくらいで、きっちりとしたストラクチャーが持ち味。

 一方カステッリ・ディ・イエージのほうは、ミネラルよりも酸がしっかりしていて、それにも
 ましてほのかな甘みと苦味、そしてフルーツ感が楽しめるワイン。

 双方共に非常にミネラル分が豊富なので、魚貝系、特に貝類のシンプルな料理に
 もってこいなのがヴェルディッキオです。それほどフルーティーじゃないものなら 
 生牡蠣とやっても素晴らしいですし、白ワインとの相性の素晴らしさを実感させて
 くれる素敵なワインです。

 
ステンレスタンク熟成で潜在能力を発揮し、その個性を世に問うた傑出したワイン。
 それがヴェルディッキオ・ワインの歴史的な評価になろうかと思います。


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